10.04.2014

写真をつくるということ

10.04.2014

写真をつくるということ

つくる時のあれやこれ

前回の記事では、「表現」としての写真について書かせて頂きました。今日はそれを少し掘り下げて、私が作品を作りながら考えていることを、お話ししようと思います。

私は、つくろうと決めた作品の主題に合わせ、何冊か本を読むことが好きです。“人と自然”という大きなテーマを掲げた作品を制作している時に、何度も読み返したのは、『ニングルの森』という倉本聰さんによる童話です。アイヌの伝承における小人“ニングル”が、彼らの視点で人間と自然についてのあれこれを語るお話です。幼い頃、大好きな先生にこの本を読み聞かせてもらったことも手伝い、私の自然観の根底にはこのお話があるのかもしれません。

そして、”あたま”の中に生まれたイメージを視覚化するために、一度ノートにラフを描きます。
この一連の作品では、人のからだをうつくしく写すために、彫刻や絵画の裸身像を参考にすることが多く、美術書をめくり、よく眺めていました。
ラフを描いて、撮影して、また手直しのラフを描いて撮影して…、そうやって”あたま”のなかの理想に写真を寄り添わせていくことは楽しいことでした。

からだに絡む蔦や苔、幾層にも重なる背景については、デジタル処理で少しずつ人に重ねています。この、「重ねる」という作業を行う時間は、この作業の人為的なプロセス自体が人のエゴを象徴しているようだなあ、とよく考えていました。人と自然というテーマに深く向き合うことができたのも、この作業をしているときだったのかもしれないと感じています。

 

私はこんなことを考えながら、いつも楽しく一生懸命に写真をつくっています。

桑田 恵里(ERI KUWATA)
1990年、東京都生まれ。東京都在住。
2013年に日本大学芸術学部写真学科を卒業し、日本大学大学院芸術学研究科映像芸術専攻写真分野 前期課程に在籍。
2013 日本大学 芸術学部長賞
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http://erigraphy.tumblr.com

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