24.04.2014

写真で伝えるということ

24.04.2014

写真で伝えるということ

写真における「伝達」という機能についてのあれこれ。

写真の三つの機能、記録、伝達、表現。
これまでの記事ではそれぞれ、写真における表現、そして記録について書かせていただきました。私の最後の記事となる今回は、写真の“伝達”という機能について書いてみようと思います。
写真による伝達とは、表現においても記録においても、写真を“世の中に提示する”際の機能だといえます。
そして、社会的な伝達メディアとして、ジャーナリズムやドキュメンテーションに基づく記録性の高い写真が利用されることは、写真の“伝達機能”において大きな意義があると考えられます。報道写真は、その代表的なメディアであると言えるでしょう。
報道写真の成立は、1920年代から30年代にかけ、ヨーロッパを軸に、世界各地で写真表現の革新が起こったことを発端としています。報道写真の成立の代表的な出来事といえば、1936年の雑誌ライフの創刊や、1947年のマグナムフォトの設立などが思い起こされるでしょう。
当時の写真を見ていると、報道写真における伝達という機能は撮影や印刷の技術の発展とともにその重要性を確かなものとし、その最初の大きな役割は、鑑賞者である大衆の「“いま・ここ”で起こっている現実を、すぐに見たい」という欲求を受け止め伝えることだったのだろう、と感じます。またその役割は、現代に至るまで絶えることなく果たされ続けている、と私は思います。

私の書く最後の記事となる今回、掲載する作品は“表現”についての記事に掲載したシリーズより、さらにいくつか選んだものになります。これは私が写真をつくる時に軸を置く“表現” 分野のの作品を、みなさまに見て頂きたかったためです。

この作品を制作している時、主題に向き合うと同時に、主題を“伝達”するための方法や作品様式についても深く考えました。

芸術表現としての写真において、異なった伝達や手段を選ぶということは作品鑑賞時に大きな影響を与えているのではないかと思います。
例えば、同一の主題を持つ作品でも、モダニズムやポストモダンのように性質の異なる作品様式から制作が行われたものであれば、それぞれ、まったく異なった伝わり方をするでしょう。よって、鑑賞者へ提示する時のスタイルと作者が作品に託す主題の在り方が、異なってくるのだと考えられます。

こういったことが、現代の多様化した写真表現を理解するのを難解にしていると考えられます。ですが、その難解さすらとても面白いことだとも感じます。

写真の三つの機能、記録、伝達、表現。これらの要素をじっくり考えてみることは、写真をつくる全ての人に役立つことだと、私は思うのです。

 

桑田 恵里(ERI KUWATA)

1990年、東京都生まれ。東京都在住。
2013年に日本大学芸術学部写真学科を卒業し、日本大学大学院芸術学研究科映像芸術専攻写真分野 前期課程に在籍。
2013 日本大学 芸術学部長賞

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