01.08.2014

Viaggio! 石川直樹が巡るイタリア– 第3回

01.08.2014

Viaggio! 石川直樹が巡るイタリア– 第3回

ヴェネツィアからマンフロット誕生の地バッサーノ・デル・グラッパへ。 Viaggio! Viaggio! Italy マンフロット誕生の地バッサーノ・デル・グラッパ。イタリア経済の中心であり最新モードの発信地ミラノと、中世に栄華をきわめ今でも職人たちが伝統を守る水の都ヴェネツィアとの間に位置し、両地域の影響を受けながらも個性的な魅力を育んできた小都市を、写真家・石川直樹さんと巡るViaggio(旅)に出かけよう! Viaggio! Viaggio! リノの家を後にして、市街の中心に立つ塔に登った。ここからバッサーノ全体の景色を見渡すことができる。赤レンガの建物が連なり、中世の町を彷彿させるその風景の先に、リノのお屋敷があった。庭にはオリーブの実がたわわに実り、左手にはブレンタ川が静かに流れ、その先にはグラッパ山がある。肥沃な大地を絵に描いたような地域で、こんなところで好きなカメラを触りながら余生をおくっているリノの人生をうらやましく思わないわけがない。 Viaggio! バッサーノのあるヴェネト州は、かのディーゼルベネトンを生んだ地域でもあり、戦後一代で国際的に名が知られる企業をいくつも生み出したという意味では、珍しい土地柄だと言える。バッサーノ自体、イタリアの中でも農業のイメージが強い田舎町だが、ファッションや経済で栄えているミラノ、職人的な工芸が未だに息づくヴェネツィアの間に挟まれて、特異な発展を遂げている。この地方の出身者は質実剛健を好み、粘り強い性格をもっているという。生まれた土地で創業し、そのまま本社を大都市に動かさないというのも、郷土愛が強いイタリアならではの考え方だろう。 Viaggio! Viaggio! Viaggio! こうした色々な意味で豊かな土地柄とリノの写真への情熱が相まって、マンフロットの三脚もまたこの地で誕生した。三脚はカメラを支える縁の下の力持ちである。いわば、いぶし銀の名脇役であるマンフロットが、一大観光地であるヴェネツィアのそばに佇む小さな町で生まれたのは必然だったのかもしれない。目立つスターよりも、控えめな実力者のほうに、ぼくはずっと惹かれてきた。だからこそ、ぼくはマンフロットが好きなのである。そんなことを、この旅で改めて実感することになった。 Viaggio! 写真ba_20 石川直樹 Naoki Ishikawa 1977年東京生まれ。 東京芸術大学大学院美術研究科博士課程修了。 『CORONA』(青土社)により第30回土門拳賞を受賞。主な著書に『いま生きているという冒険』(イーストプレス)、開高健ノンフィクション賞を受賞した『最後の冒険家』(集英社)、「ほぼ日」の連載をまとめた『世界を見に行く』(リトルモア)がある。 東京・六本木のIMA CONCEPT STOREでは「MAKALU」展開催予定(8月20 日~10月5日)。 http://www.straightree.com/

Top
Our Brands