星景撮影の実際の撮影方法

26.06.2015

失われた場所について:星景編 Part2

26.06.2015

失われた場所について:星景編 Part2

[イントロダクション]

連載第1回目では、失われた場所(Lost Places)の撮影に関して、連載第2回目では、Instagramにおけるワークフロー等に関して、そして連載第3回目では星景撮影についての準備事項について紹介した。連載第4回目(最終回)となる今回は、星景撮影の実際の撮影方法について写真と共に紹介していく。

星景撮影の実際の撮影方法

 

星景撮影の実際の撮影方法2

 

[撮影計画]

1.場所(被写体)

多くの星を写すには光害の少ない暗い場所が適しているが、広い公園などでも撮影は可能だ。また、軌跡撮影(詳細は後述する)であれば、例えば都市夜景と一緒に写したとしても星の存在感を出すことが可能である。

星景撮影の実際の撮影方法3
なお、暗い場所での撮影には十分な注意が必要だ。昼間であれば何でもないちょっとした側溝やくぼみが、夜になると一変して危険なトラップとなる。明るい時間に十分なロケハンをすると良いだろう。

余談ではあるが、先日とある廃バスを前景に星景を撮影しようとした際に、現地に行けば暗い中でも廃バスを探せるだろうと高を括っていたのだが、数十分当たりを走り回っても見つからず、結局無駄な遠征となってしまったことがある。明るいうちならきっと見付けられたはずだ。ロケハンは大事である。

 

2.天気

天気予報や星空指数、GPVを撮影出発の直前まで十分に確認し、晴れた星空を狙う。月が出ている場合は多少の雲が出ていても良い雰囲気になる。なお、星空指数については参考程度にしておくのが良いだろう。

星景撮影の実際の撮影方法4

 

3.月齢

星だけを撮影する場合は出来るだけ新月に近い月齢を狙うのが望ましいが、星景撮影の場合はあまり重視しなくても良いと思う。月を取り入れた構図を狙うのも良いし、月をフレームインさせない場合でも、月明かりが前景を良い感じに照らしてくれる。個人的に前景をライトで照らすのが好きではないので、半月前後の月齢が好みである。

星景撮影の実際の撮影方法5
[撮影方法]

前置きが(かなり)長くなったが、いよいよ撮影方法についてである。星景の撮影方法には大きく分けてカメラを固定して撮影する”固定撮影”と赤道儀を用いてカメラの動きを星に合わせる”追尾撮影”があるが、ここでは固定撮影について紹介する。追尾撮影についてはどうしても地上風景が流れてしまうため、星景写真で使うには被写体の見極めが必要であろう。なお、固定撮影については星を点像として写す方法と、軌跡として写す方法の2通りがあるため、分けて紹介するが基本の撮影方法は同様である。

 

1.固定撮影(点像)

星景撮影の実際の撮影方法6
STEP1 構図決め

前提として、星景撮影についてはOVF(光学ファインダー)では無くEVF(ライブビュー機能)を用いて行う。撮影場所によってはEVFに何も写らず真っ暗なことも多いだろう、その為、まずは以下のセッティングとする。

絞り:開放
シャッタースピード:2秒程度
感度:カメラで設定可能な最大値
形式:RAW
※露出ディレイモードを使用している場合は切っておく

上記の設定とすることで、ノイジーではあるが、前景も含めた明るい撮影結果が得られるはずだ。

露出結果によってはシャッタースピードを増減させて調整して欲しい。この設定で試し撮りを繰り返しながら構図を少しずつ修正し、好ましい構図を得る。

STEP2 ピント合わせ

星景撮影の場合、どこにピントを合わせるかについては撮影意図によっても変わってくる。
私の場合、前景に建物等を入れることが多いため、ピントは建物に合わせることが多い。その際はLEDライトで建物を照らし、AFでピント合わせを行う。前景が遠くの風景であったりする場合は、星にピントを合わせるのが良いだろう。その場合は、EVF上で明るい星を最大限に拡大表示した上で、MFでピント合わせを行うと良い。AFを切るのを忘れずに。AFを切らずにMFでピントを合わせた後、シャッターを切ろうとしてせっかく合わせたピントが台無しになる、というのをつい毎回やらかしてしまう。

STEP3 撮影

まずはセッティングを以下の通りとする。

絞り:開放
シャッタースピード:30秒
感度:ISO1600
形式:RAW

※長時間ノイズリダクションについてはONにしておいても良いが、ダークフレームと呼ばれる画像を用いたダークフレーム減算処理(ダーク補正)を後でまとめて行うことも可能である。詳細はここでは割愛するが、興味のある方は調べてみて欲しい。
上記を基本とし、撮影結果に応じてセッティングを微修正する。例えば、露出オーバーの場合はISOを下げてみたり(ノイズが低減される)、絞りを絞ってみたり(特に周辺画質が向上する)と言った具合だ。特に絞りについては開放より1段~2段絞ることで周辺減光とサジタルコマフレアと呼ばれる点像が鳥が羽を広げたような形状に写る収差を改善することが出来る。

また、上記のシャッタースピード30秒は14mmの広角レンズ使用時の推奨値であり、焦点距離が長くなるに従って星を点像に写す場合のシャッタースピードは短くなる。星を点像で写す場合のシャッタースピードについては500ルールと呼ばれる計算方法がある。これは500を焦点距離で割った時間を適正シャッタースピードとする求め方であり、例えば前述の14mmの広角レンズを例に挙げると、500 ÷ 14mm = 35.714…となり約30秒であることが分かる。これが例えば24mmであれば、500 ÷ 24mm =  20.833…となり約20秒となる。ただし、いわゆる等倍鑑賞をする場合や、大きく引き延ばしてプリントする場合は500ルールで撮影しても厳密な点像にはならない為、更に厳しい基準での設定が必要となる。私の場合は14mmで15秒と設定することが多い。(これは上記に当てはめると200ルールとなる)

 

 

2.固定撮影(軌跡)

星景撮影の実際の撮影方法7

軌跡撮影については、基本的には点像撮影と同様であり、違うのは連続して撮影するという点である。連続して撮影された点像の写真を比較明合成(コンポジット)と呼ばれる合成方法で合成して軌跡の画像を得る。もちろんシャッタースピードを長くすることでも軌跡撮影を行うことが可能であるが、デジタルカメラの場合はノイズの関係で数十分の撮影が限度であり、露出の設定もより難しくなるためここでは割愛する。

連続撮影については、カメラの連写機能を用いる方法と、インターバルタイマーを用いる方法がある。
基本的には連写機能を用い、レリーズケーブルを押し込むことで連写し続ける、という方法で問題ないが、私の使用しているNikonのカメラの場合、どんなに低速シャッターの場合でも100枚前後でバッファが一杯になってしまうという仕様であるため、1時間を越える連続撮影には連写機能は用いることができない。
この為、インターバルタイマーにて連続撮影を行っている。インターバルタイマーの使用方法についてはカメラによっても異なるため、詳細は割愛するが、例えば20秒の露出であれば、21秒毎にシャッターが切られるようにタイマーをセットする、という具合である。

星景撮影の実際の撮影方法8
比較明合成(コンポジット)の方法についてはWindowsであればSiriusComp、MacであればStarStaXがおすすめだ。実際の使用方法については(文字数の関係上)配布元のWebサイトや解説サイト等を参考にして欲しい。

 

[最後に]

二回に渡って星景撮影について紹介させて頂いた。今回の記事で星景撮影に興味を持って頂いたり、星景撮影に感じていた敷居を少しでも下げることが出来たのであれば幸いである。

 

 

 

 

 

最後の最後に…

 

 

 

 

 

 

 

 

失われた場所の星景をテーマとした写真展、やります。

失われた場所の星景をテーマとした写真展、やります。

 

 

啝(わ)

失われた場所クロニクル
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2006 志免炭鉱竪坑櫓に衝撃を受け、写真を撮り始める
2013 グループ展「廃墟展6」(彩珈楼ギャラリー)
2014 グループ展「廃墟展7」(彩珈楼ギャラリー)
二人展「コウサテン」(デザインフェスタギャラリー)
グループ展「ハイキョテンVol.1」(Gallery cafe bar LIS)

 

以下、今後の出展予定

グループ展「史上最強のインスタグラム展」(Photons Art Gallery)
2015.6.15-6.21
グループ展「廃墟展8」(彩珈楼ギャラリー)
2015.6.15-6.28
個展「失われた場所プラニスフィア」(オリンパスギャラリー)
東京会期:2015.10.30-11.4
大阪会期:2015.12.4-12.10

 

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